2025年06月11日

偉大と言われる人ほど謙虚さを忘れない

 大谷翔平選手の活躍が今年も止まりません。「同じ人間か?」と思うほど、異次元の活躍です。

 すべてにおいてパーフェクト過ぎる大谷選手ですが、ホームランを打ってベンチに戻るときなど、白線や書いてあるイラストを踏まないことでも有名です。ビッグな人間になると、普通は態度もビッグになってしまい、白線などにも気がいかないものですが、この小さな気遣いができる大谷翔平選手は人としても本当にビッグ過ぎる人だと思います。

 先日、女子ゴルフを見ていても「おっ!」と思うことがありました。申ジエという選手を知っている人はあまりいないかもしれませんが、韓国で“生ける伝説”と呼ばれ、世界のツアーで挙げた通算勝利数は「66」。韓国21勝、米国11勝、日本31勝、その他3勝を合わせて66勝と、とんでもない数の勝ち星を挙げているゴルフ界のレジェンド中のレジェンドです。

 そんな申ジエ選手ですが、「この人ほんとにすげぇな」と思う一コマがありました。申ジエ選手は18番ホールでギャラリースタンドから迎えられる拍手を受けるとき、必ずキャップを脱いで、サングラスも外し、丁寧にあいさつしてからグリーン上へ上がります。ほかの選手も一礼はしてからグリーンにあがりますが、キャップもサングラスもはめたままです。こういった所作は正にプロゴルファーの鑑、こんなに実績があるのにとんでもない謙虚な姿勢と思ってしまいました。

 あまりにもジェントル過ぎるので、申ジエ選手の生い立ちについて調べてみたところ、過去に凄まじい経験をされていることがわかりました。

 中学3年の時に最愛の母がトラックと正面衝突で帰らぬ人に。同乗していた妹と弟も入院し、家族はどん底となった。経済的に裕福な家庭でなかったこともあり、母にかけられていた保険金は借金の返済にあてられ、手元に残ったのは1700万ウォン(約170万円)だけ。プロゴルファーの道を諦めるようと考えていた矢先、ゴルフを始めるきっかけをくれた父から「お母さんが命と引き換えに残してくれたお金だ。このお金で一生懸命ゴルフをさせるから、一緒にがんばろう」申ジエ選手は母の死を機に心を強くしたといいます。

 「これまでは『ミスしても経験だ。次にがんばれば良い』という考えでしたが、その1回のミスで一生、後悔するという事実を知りました。後回しにせず、目の前のことをしっかりすると決めたのです」

 悲しくも壮絶な話ですが、すべての“一打”に人生をかけている、その覚悟が申ジエ選手をとんでもない選手へ成長させたのだと思います。そして、「生かされている」という強い感謝の思いが、キャップもサングラスも外すという「謙虚さ」につながっていると感じました。すぐに調子に乗る私ですが、「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」を肝に銘じ、今月も気張ってまいります。

東名鍛工株式会社 代表取締役社長 宮嶋俊介